公正証書遺言の効力や遺留分との関係をわかりやすく解説
■遺言とは
遺言とは、自分が死亡した後に、死亡前に有していた財産のうちのどの財産を誰に対して渡したいのかということについて、生前に意思表示をしておくことをいいます。遺言を書面にしたものは遺言書と呼ばれ、相続が開始された後は原則として遺言書に基づいて手続きがなされることとなります。
■遺言の種類
遺言には、よく使われるものとして、主に2種類があります。
①公正証書遺言
遺言者が、公証人と証人(2名)の前で遺言の内容を口頭で伝え、公証人がその遺言が遺言者の真意に基づくものであることについて確認をした上で、その内容を文章にまとめ、最終的に遺言者と証人の確認を経て遺言書とするものをいいます。
②自筆証書遺言
自筆証書遺言とは、遺言者が紙に遺言の内容をすべて手書きで記載し、署名押印をして作成するものをいいます(但し財産目録はパソコンでの作成でも可)。自筆証書遺言によって遺言書を作成する場合には証人が必要とされず、遺言者一人でも作成することができるという点で、公正証書遺言より簡易的な方法による遺言となります。
■公正証書遺言の効力とメリット
①公証役場で原本保管が可能
公正証書遺言の方法により作成された遺言書は、公証役場において厳重な管理下で保管されることとなります。保管期間に関しては公証人法施行規則によって定めが置かれていますが、100年を超えて保管している公証役場も存在するなど、その期間は相当長期間となることが多いです。このような公正証書遺言の効力から生じるメリットとしては、遺言書の紛失や破棄・隠匿のリスクがないということが挙げられます。
もっとも、自筆証書遺言の場合であっても、遺言書の保管を申請した場合には、法務局において適正に管理・保管してもらうことができます。この制度を「自筆証書遺言保管制度」といいます。申請を行い、一度保管された遺言書は、保管の申請の撤回をしない限り返却されないため、注意が必要です。
②検認の必要がない
自筆証書遺言の場合には、遺言者がお亡くなりになった後、遺言書を開封する前に検認を行わなければなりません。もっとも、公正証書遺言の場合には、偽造等の危険性が限りなく少ないことからこのような検認を経る必要がありません。
③遺言検索システムの存在
1989年以降に公正証書遺言によって遺言書を作成した場合、日本公証人連合会の保有するデータベースに、本人情報や作成日、保管場所といった情報が登録されており、本人又は利害関係者(本人の死後に限られる)が遺言書を検索することができます。もっとも、内容については開示されないため、これについては公証人役場で確認する必要があります。
公正証書遺言には他にも、公証人が専門家として遺言を作成するため、遺言が法定の様式に違反して無効となる場合が少ないといったメリットや自書が必要とされないといったメリットなどがあります。
■遺留分との関係
遺留分とは、民法が、法定相続人の相続財産に対するいわゆる期待権として一定の権利(≒最低限の取り分)を定めたものです。この遺留分を侵害する形で遺言書が作成された場合は、遺留分権者は、財産を譲り受けた人に対して遺留分侵害請求を行うことで金銭を請求することができます。
この遺留分侵害請求は、公正証書遺言によって遺言書が作成されている場合であっても行うことができます。
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