遺言書と遺留分減殺請求(遺留分侵害額請求権)
■遺留分とは?
遺言とは、被相続人による相続方法等についての意思表示です。人が死亡した場合、民法に定められた相続人(法定相続人)が、民法に定められた相続割合(法定相続分)に基づき相続人で遺産分割協議をするのが通常です。しかし、遺言により相続人や相続割合が指定された場合、これに従うことになります。
しかし、例えば、長年の知人に全ての遺産を譲る旨の遺言書が作成されていた場合、残されたご家族は途方に暮れてしまうことでしょう。
そこで、民法は法定相続人に最低限度の相続割合(遺留分)を認めています。遺留分はあくまでも最低限度の取り分であるため、直系尊属のみが法定相続人となっている場合には相続財産の3分の1、それ以外の場合には相続財産の2分の1となっています。兄弟姉妹相続では遺留分はありません。
遺留分に満たない財産しか相続できなかった場合、法定相続人は、遺言により相続した人に対して金銭の支払いを請求できます。
このような請求権のことを、遺留分侵害額請求権といいます。
なお、遺留分侵害額請求は、「相続の開始及び遺留分を侵害する贈与又は遺贈があったことを知った時から一年間行使しないときは、時効によって消滅する。
相続開始の時から十年を経過したときも、同様とする」とされております。遺留分侵害額請求を行うか否か、必ず期限内に結論を導いておきましょう。
■民法改正の影響
従来の民法では、法定相続人に「遺留分減殺請求権」が認められていました。しかし、2019年7月施行の改正法では、「遺留分侵害額請求権」へと名称が変更されています。中身の部分の変更点は、2点あります。
1点目は金銭賠償への変更です。従来の遺留分減殺請求権では請求した時点で一旦は遺産のすべてに効力が及ぶと考えられていました。つまり、請求した時点で遺産である不動産や金銭のそれぞれについて侵害額分の権利が発生することになっていました。しかし、例えば遺産の不動産すべてにつきその侵害額分の権利が発生したからと言ってそれを使ったり処分したりできるわけではなく、結局は遺留分侵害相当額を金銭で給付するという形で解決が図られることが多く行われていました。
こういった実務上の背景もあり遺留分侵害額請求権として、遺留分侵害額相当の金額について、金銭による請求を行うと整理されました。
2点目は、請求範囲の限定です。被相続人が生前から家族以外の人に対して贈与をしていたような場合、この生前贈与された財産も相続財産の一部とみなし、遺留分の計算に含めることができます。
従来は、被相続人の死亡から50年以外の生前贈与であれば計算に含めることができるとされていましたが、現行法ではこの期間が限定され、死亡から10年以内の贈与のみが遺留分の計算の対象となります。
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